初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
彼の過去とプロポーズ
銀座で食事をしてから二週間が経った、日曜日の午後三時。
「直斗君、待っていたよ」
「ご無沙汰しております」
「二十年振りに会えてうれしいよ」
応接間に響き渡るような大きな声をあげた父親に、彼が静かに頭を下げる。
直君を紹介したいと伝えたときから父親は上機嫌だ。
「ウィーンで再会したのがきっかけで、お付き合いが始まったのかしら?」
「はい。挨拶が遅れましたが、小夜子さんと結婚を前提にお付き合いさせていただくことをお許しください」
母親の質問に答え、挨拶をしてくれた彼と一緒に頭を下げる。
付き合っているフリをしているのがバレるのではないかとビクビクしている私とは違い、彼は堂々としていて余裕が感じられる。
足手まといになるわけにいかないと、改めて気持ちを引きしめた。
「直斗君が相手なら安心だ。小夜子のことをよろしく頼むよ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
挨拶がスムーズに進み、安堵して父親と彼の会話に耳を傾ける。
「ご両親はお元気かな?」
「はい。おかげさまで今はマレーシアに住んでいます」
「それはうらやましいな」
「マレーシアに赴任したときに住みやすかったようで、退職したら永住すると決めていたらしいです」
「なるほど」
初めて聞くご両親の話に関心を寄せて、引き続き耳を澄ます。