初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「直斗君は外交官として働いているらしいね」
「はい。今は本庁勤務ですが、四年前までシンガポールに赴任していました。多分、来年の四月か、遅くても十月には海外勤務の異動辞令が出ると思います」
外交官は海外赴任が多いと知ってはいたけど、そんなに早く異動があるとは考えてもみなかった。
折角再会できたのに、また会えなくなるのは寂しい。
胸が押しつぶされそうな痛みを感じていると、父親の口から耳を疑う言葉が飛び出た。
「だったら、早めに入籍を済ませて式をあげた方がいいな。久子もそう思うだろ?」
「ええ、そうね。直斗さんのご両親のお許しが出たら、急いで準備した方がいいわね」
いきなり結婚の話を進め出した両親を、信じられない思いで見つめる。
「ちょっと待って。お見合いはどうなるの?」
「直斗さんという素敵なお相手がいるのだから、お見合いは必要ないでしょ」
母親の返事を聞き、ホッと胸をなで下ろす。けれど、私と彼の関係を勘違いしてもらっては困る。
「あのね、私たち、すぐに結婚しようとは思っていないから」
結婚を前提として付き合っているフリがバレないような言葉を選んだものの、父親はまったく取り合ってくれなかった。