初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「いい年をして、なにを言っている」
年齢についてとやかく言われるのは気分が悪いけれど、父親があきれる気持ちは理解できる。
紹介したい人がいると言って直君を会せたのに、すぐに結婚しようとは思っていないと言われても納得できないのだろう。
このまま両親を騙し続けるのは心が痛むし、彼にも迷惑はかけられない。
「実は……」
直君を家に連れて来た経緯を、両親に説明しようと心に決めた。けれど、私の話を遮るように彼が口を開く。
「小夜子ちゃん。俺と結婚してほしい」
父親に責められた私を助けるためとはいえ、両親の前で嘘のプロポーズをするなんて信じられない。
隣に座る彼の顔を愕然と見つめていると、父親が意気揚々と声をあげた。
「すぐに結婚しようと思っていなかったのは、小夜子だけだったみたいだな」
満足げな言葉を聞き、ハッと我に返る。
これ以上、彼に嘘をつかせるわけにいかない。
「違うの。これは……」
両親にすべてを打ち明けようとしたとき、彼が勢いよくソファから立ち上がった。
「すみません。小夜子さんとふたりで話をさせてください」
「ああ。わかった」
「ありがとうございます」
父親の返事を聞き、頭を下げて応接間を出て行く彼の後を慌てて追う。