初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

銀座のお寿司屋さんから帰るタクシーの中で、食事代を払おうとした私に彼は『今度、コーヒーをごちそうしてくれるとうれしい』と言った。けれど、その約束はまだ果たせていない。

今日こそは私がごちそうする番だと意気込むと、彼がクスクスと笑い出した。

「わかった。じゃあ、カフェでランチをしてから映画でも観に行くか?」

「うん。行く!」

差し出された手に自分の手を重ねて歩を進める。

今日の彼は黒のシャツにカーキのチノパンスタイル。カジュアルな服装もよく似合っていてカッコいい。一方の私は花柄のワンピースにアイボリーのフラットシューズをチョイスしてきた。

カフェに行きたいと自ら言ったけれど、新宿には滅多に来ない。興味深げに辺りを見回して歩いていると、角地に建つビルの一階に白い外観が目を引くカフェを見つけた。

「あのお店は?」

「いいな。あそこにしよう」

彼に手を引かれて店内に入り、案内されたソファ席に腰を下ろす。カウンターや壁際に観葉植物が配置された、ボタニカルな雰囲気に心が癒やされる。

有機野菜を使用したサラダランチと自家焙煎のコーヒーをオーダーすると、向かいの席に座る彼が口を開いた。
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