初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「ご両親にも話したけれど、来年の四月に海外赴任の辞令が出ると思う。さすがにまだどこの国に行くかはわからないけれど、俺は小夜子ちゃんに妻としてついてきてほしいと思っている。だが、そうなるとピアノ講師の仕事を辞めてもらうようになってしまうが、それについてどう思っているのか聞きたい」
プロポーズされて浮かれていた私とは違い、彼はすでに将来を見据えている。
いつまでも夢見心地でいた自分を恥ずかしく思いながら、結婚について考えを巡らせる。
ピアノ講師という仕事に未練がないと言ったら嘘になる。けれど、直君と離れ離れになってまで、仕事を続けるつもりはない。
「赴任先について行って直君を支えるのが、私の務めだと思っています。だから、どこの国に赴任になっても一緒に行きます」
「ありがとう」
今まで真剣な面持ちで私の話に耳を傾けていた彼が、切れ長の瞳を細めて微笑む。
優しい笑顔を目のあたりにしたら、ふと気持ちが緩みそうになってしまった。けれど、話はこれで終わりではない。
「それからピアノ講師は、三月末の発表会が終わったタイミングで退職するのが一番いいのかなって思ってます」
緊張のなか、一気に話をすると彼が大きくうなずいた。