初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「俺より、小夜子ちゃんの方が濡れているだろう」
濡れたワンピースの裾を、彼が丁寧に拭いてくれる。
気遣いはうれしいけれど、彼を顎で使っているようで落ち着かない。
「も、もう大丈夫。ありがとう」
「どういたしまして」
上半身を起こして微笑む彼の様子を見て、ホッと息をつく。
まだ雨は降り続けている。
予期せぬハプニングに見舞われてしまったけれど、この出来事もいつか笑い話になるだろう。
ふたりの思い出がまたひとつ増えたことをうれしく思いながら、タクシーに揺られた。
「どうぞ」
「おじゃまします」
恵比寿駅からほど近いマンションのセキュリティを解除して、ドアを開けてくれた彼の前を通って部屋に上がる。
「こっち来て」
「あ、うん」
勝手がわからない室内にまごついている私にひと声かけた彼が、脇を通り抜けて右手にあるドアを開ける。
後を追って部屋に入ると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
大きなベッドの脇にスタンドライトがある部屋は、説明されなくても寝室だとひと目でわかる。
いったい、どういうつもりで私を寝室に呼び寄せたのだろう。
心に不安が広がっていくのを感じたとき、彼の口から耳を疑う言葉が飛び出た。