初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
直君の言う通り、早く着替えないと本当に風邪を引く。
ボタンをはずしてワンピースを脱ぎ、彼が用意してくれた服に袖を通した。
「うわぁ、大きい」
白いTシャツはお尻が隠れるくらい長いし、黒のジョガーパンツのウエストはダボダボだ。
改めて彼の大きさを実感しながら、ジョガーパンツのウエストの紐を固く結ぶ。
それにしても、ほのかに彼の香りが感じられる服を着ていると、まるで抱きしめられているような気がしてなんだか恥ずかしい。
「……んふふ」
ひとりで照れ笑いしている自分が居た堪れなくなり、急いで寝室から出ると彼が待っているリビングへ向かった。
「直君、着替えありがとう」
リビングの奥に見えるキッチンに立つ彼に声をかける。
私が寝室にいる間に、直君も着替えたようだ。グレーのTシャツにジーンズスタイルの彼が私に視線を向ける。
「小夜子ちゃんが着られそうな服が、それしか見あたらなかったんだ。悪いな」
サイズが合っていない服を着ている姿がおかしかったのだろう。彼が小さく吹き出す。
借りた服は大きすぎて似合っていないと自覚してはいるけれど、失笑されては気分がヘコむ。
「もう! 笑わないでよ」
頬を膨らまして必死に訴える私のもとに、彼がコホンと咳払いして近づいて来た。