初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「わかった。もう笑わない」
一瞬、真顔になったものの、形のいい唇の端がすぐに緩み出す。
笑うのを必死に我慢している様子は新鮮で、なんだかかわいらしい。
心が和むのを感じていると、目の前に大きな手のひらがスッと差し出された。
「乾燥機にかけてくる」
誰が見てもひと目で男性用だとわかる服を着て帰るのは、さすがに周りの視線が気になる。
「ありがとう」
手にしたままでいた濡れたワンピースを渡すと、彼がリビングから出て行った。
ひとりになり、興味深げにリビングを見回す。
ベージュ色のL字型のソファの前にはガラステーブルがあり、壁際には大きな薄型テレビが配置されている。
突然訪れたにもかかわらず、広々としたリビングは整理整頓が行き届いているし、寝室のベッドカバーもシワひとつなかったのを思い出す。
もしかしたら掃除好きなのかもしれないと考えていると、彼がリビングに戻って来る。
「綺麗にしてるね」
「そうか? 多分、物が少ないせいじゃないかな」
そう言われると、雑貨やクッションなどの小物は一切見あたらない。
「引っ越しの荷物を増やしたくないから、必要最小限の物しか買わないように心がけている」
「そうなんだ」
「ああ」