初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
気の置けない仲間たちと楽しそうに過ごしている様子は微笑ましいけれど、その後の悲しい結末を知っているだけに彼の笑顔を見るのがつらい。
複雑な思いを抱えて写真を見続けていると、女性と肩を寄せて笑う彼の姿が目に飛び込んできた。
近い距離を気にもせずにカメラに視線を向ける様子を見た瞬間、ふたりの関係を悟る。
「この人って……直君の元カノ?」
「……まあ、そんなとこだ」
少しの間を置いて返ってきた答えは予想通りだったにもかかわらず、胸がチクリと痛んだ。
誠実で優しい彼は絶対モテたはずで、付き合っていた人がいて当然だ。けれど、元カノとの仲睦まじいツーショット写真を見てしまったら、心穏やかではいられない。
すべての写真を裏返してテーブルの上に置く。
真っ直ぐな黒髪が似合う綺麗な彼女は日本人のように見えたけど、それを聞いたところで一度火がついた嫉妬の炎は簡単には消えない。
黒い感情が心の中で渦巻くのを実感していると、手の甲に彼の手が重なった。
「もう昔のことだ。今は小夜子ちゃんが一番大事だ」
私に真剣なまなざしを向ける彼が、嘘を言っているとは思わない。でも、言葉だけではないたしかな絆がほしい。
「……だったら、証拠を見せて」