初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
過去の恋愛にヤキモチを妬くなんて、大人げないと思われたかもしれない。でも、写真の中で微笑む彼女を忘れる方法がほかに思い浮かばない。
重なったままの手を払いのけ、彼の両肩に手をかけてソファに押し倒す。そして、抵抗しない彼に覆いかぶさると、形のいい唇に自分の唇を重ねた。
キスをすれば心が満たされて、元カノの存在なんて気にならなくなる。
そう思っていたのに、心が虚しい思いで埋め尽くされていく。
「……ごめんなさい」
唇を離して独りよがりな言動を謝ると、組み敷かれたままでいる彼の頬に涙がポトリと落ちた。
「俺の方こそ、嫌な思いをさせてごめん。写真は処分する」
彼が上半身を起こして、涙で濡れた目もとを指先で優しく拭ってくれる。
私の嫉妬やワガママを冷静に受け止めてくれたおかげで、混乱していた感情がようやく落ち着きを取り戻した。
私だって元カレと一緒に出かけたときに撮った画像を、今もときどき見返したりする。でも、当時を懐かしく思っても、元カレに未練を感じたことは一度もない。
それは直君もきっと同じはずなのに、元カノに対抗心を抱くなんてどうかしていた。
「ううん。大切な思い出なんだから捨てなくていい。ワガママ言って本当にごめんなさい」