君は。
.プロローグ.

春と初夏のそよ風を運ぶ西風の神ゼピュロスは、花と春の女神フローラの侍女のアネモネを愛していた。

女神フローラは夫である西風の神ゼピュロスが自分を愛していると思っていたが、愛されているのが侍女であるアネモネだということを知る。

怒った女神フローラは、アネモネを自分のところから追い出してしまった。

西風の神ゼピュロスは、女神フローラとの平和を保つため、仕方なくアネモネを見捨て、彼女の姿をアネモネの花に変えたという。

俺は春のそよ風が吹く中、丁度読んでいた神話を鞄にそっとしまい、ある所へ立ち寄った。

そうして一人呟く。

「アネモネ……。そうか、君だったんだね」
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