一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
私はふぅっと小さく息を吐くと
先ほど購入した袋の中から
スケッチブックを取り出した。
そして丸椅子に座ると
スケッチブックに鉛筆で
サラサラと描き始めた。
「キャンバスに描かないの?」
不思議そうな顔を浮かべる一色さんに
私はチラッと目線だけ向けると
考えるように口を開いた。
「あの、これは...ホテルに飾る絵ですし...
いくつか原案を描いて社長の意見を参考にして描いた方が良いと思いまして...」
「ふ~ん...」
私はそう答えると再び黙々と
スケッチブックに描き始めた。
私の真剣な横顔を一色さんは食い入るように
見つめている。
「なんか、絵を描いてるときの
かよ子さんてかっこいいね」
「えっ?」
「そんなにスラスラと自分の思い通りに
描けるなんてすごいよ!」
「そ、そんなことないです...
私には絵を描く事くらいしか取柄がないですし...
わたしは一色さんのように明るくて積極的な人が羨ましいです...」
「そんなこともないよ...
あんまり僕みたいに自己主張が強いと
生意気だっていう人もいるし
ウザがられたりすることもあるしね...」
そう言って一色さんは自嘲気味な笑顔を見せた。
「す、すみません...」
私は先ほどまで強引な人だと
少し苦手意識を持ってしまったことに
申し訳なくなり思わず謝った。
「んっ?」
一色さんは私の謝罪の意図がわからず、
キョトンとした顔をしている。