一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「少し強引だなと思ってました...
すみません...」
私が謝ると一色さんは
「かよこさんは正直な人だな」
とハハッと吹き出すように笑った。
「あ、あの...一色さんは空の絵を描こうと思った時、
どんな空を思い浮かべますか...?」
「えっ?空...?」
私の急な質問に初めはキョトンとしていた一色さんだったが、少し考えて口を開いた。
「うーんと、そうだな...
僕は澄みわたった青空かな...」
「そうですか...
でも私は満天の星空を思い浮かべるんです...
人によっては夕焼け空だったり
もしかしたら曇り空や雨空かもしれません...」
「うん」
一色さんは私の言葉に真剣に耳を傾けている。
「人によって見る景色が違うように
積極的なのが苦手だなって思う人もいれば
それがいいなって思う人も必ずいるはずなんです。
だから...そのままの自分でいいんだよって...
父が......すみません...受け売りで...」
恥ずかしさから
私の言葉はだんだん尻つぼみになっていった。
「いや、おかげで自信がついたよ。
かよ子さん、ありがとう。」
一色さんが嬉しそうな笑顔を向けると
私は少しはにかんだ笑顔を見せた。
一色さんは頬を赤く染めると
ハッと思い出したように
腕時計に目を落として
慌てたように立ち上がる。
「かよ子さん!
そろそろ仕事に戻らなきゃいけないんだけど...
また会いに来てもいいかな?」
一色さんは拾ってきた猫のように目をキラキラ輝かせて私の返事を待っている。
「え?...あっ...」
返答に困っている私を見て
一色さんはニッと微笑んだ。
「絶対会いに来るから!
じゃあまたね♪」
困った表情の私とは反対に
一色さんはウキウキと上機嫌で部屋を後にした。