一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
Side翼

「おい!総司!
何で今日はこんなに予定詰まってんだよ!?」


俺は社長室の扉を勢いよく開けると
ネクタイを緩めながら
後から入ってきた総司に問いただす。


「え?
いつもと同じようなスケジュールですけどねぇ...」


総司は首に手を当てあさっての方向を見ている。


「お前、今日の秋津商事の社長との昼食会、
急に先方から誘いがあったと言ったが
社長はお前から誘いがあったと言ってたぞ!」


俺はドサッと社長椅子に腰を下ろすと
総司にジロリと疑いの眼差しをむけた。


「えー?そうだったかなー?
最近物忘れがひどくてですねー」


余りにも白々しい総司の言葉に
俺ははあっと大きな溜め息をついた。

こいつ絶対かよ子さんに会わせないよう
わざとスケジュール詰めてるな(怒)

そのせいで今朝からかよ子さんの様子を
少しも見に行くことができていない...

俺がチラリと時計を見るとすでに針は
15時を回っていた。

かよ子さんは大丈夫だろうか...

何か困っているのではないだろうか...

俺はかよ子さんのことを考えると
いてもたってもいられなくなり
すぐさま椅子から立ち上がった。


「かよ子さんの絵の進み具合を見てくる...」


そして俺は足早に社長室を出ようと
総司の横を通りすぎたとき

「社長!!」

いきなり総司に呼び止められ、ビクッと
肩を震わせた。


「何だよ?」


俺はドアノブに手をかけたまま
わずらわしそうな表情で総司に目を向けた。


「私は別に嫌がらせのために
スケジュールを詰めた訳ではないですよ...
かよ子さんが来られたことで社長が仕事を
疎かにしてしまうことを懸念しただけです。
あまり恋にうつつを抜かしませんよう
お気をつけください。」


総司はいつになく真剣な表情をしている。


「そんなこと分かってる。
仕事はちゃんと今まで通りするつもりだ」


俺は決まり悪そうに総司から目を反らすと
ドアノブを回して社長室を出ていった。






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