一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
しかし総司の忠告もむなしく次の日、
俺は建設中のホテルに視察に行くべく、一人車で森の細い道をさ迷っていた。


「誰だよ?この分かりにくい地図書いたやつは!」

手書きで書いたその地図は、田舎の目印となる建物もないこともあって、ほぼ田んぼと川と無数の民家のみだった。
俺はイライラしてきて、ハンドルを握りながら思わず毒づく。


「地図によればそろそろ着いても
おかしくないはずだが
一本入る道間違えたか?
道が細くてUターンもできねぇ。」


少し薄暗くなってきた空がさらに翼の
焦りを増長させる。
しかも、総司に連絡をとろうにも携帯を見ればまさかの圏外だ。

今の時代、携帯が圏外の場所とか有り得ない。

俺は苛立つ気持ちを押さえながら
車を走らしらせる。

しばらく道なりに走っていると遠くのほうの少し開けた場所に
白い小さな建物が見えてきた。


「よし!あそこでUターンできる!」


俺が安心して
アクセルを強く踏み込んだ瞬間

ゴンッ

その時、左の前輪タイヤが何かに乗り上げた。

「うわっ」

そして、パンッという嫌な破裂音が響いた。


「ヤベッ!マジかよ...」

俺は車をゆっくりと停車させると、ハアっと大きく息を吐いた。

あの破裂音からして嫌な予感しかしない。

俺は車の外に出て、助手席側のタイヤを確認した。

嫌な予感は的中だ。
見事に左の前輪タイヤはパンクしていた。

「ほんとに今日はついてない....」

そう言いながら携帯電話を
ポケットから取り出すが
やはりの何度見ても圏外だ。


「クソッ!」



携帯電話を投げつけたい気持ちを押さえて
走ってきた道を見つめた。  
今からこの道を歩いて引き返すとなると
何時間掛かるか分からない。
そして振り替えり、
少し遠くに見える白い建物を見つめる。



「あそこに誰か住んでいることを願うだけだな...」


俺は重い足取りで
白い建物へと足を進めた。

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