一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「いやー、私としたことがすっかり
社長に伝えるのを忘れてました!」
「だから何をだよ?」
総司のいかにも芝居染みた口調に
翼はげんなりした顔を向けている。
「かよ子さんから社長に伝えてほしいと
言われてたんですよ!
営業部の一色くんに2対2の食事に誘われたから
今日は遅くなるって!」
「はぁーー?お前それ合コンじゃねえか?」
翼は手に持っていたグラスをバンッと置くと
一気に顔が青ざめた。
「いえいえ、かよ子さんの歓迎会らしいですよ!
でも、一色くんはかなりかよ子さん惚れてるよう
でしたからねぇ。大丈夫ですかねー」
「あ゛?一色?
場所はどこだよ!?」
「松原さんが会社の近くのリトルバードという
お店だと言ってたかな...?」
「はぁ...お前絶対わざとだな...
行ってくる!」
翼は場所を聞くやいなや、すぐに立ち上がって
サッと上着を羽織った。
「どちらへ?」
「かよ子さんを連れ戻しに決まってんだろ!
あとはお前に頼んだ」
翼は女の子と楽しそうに飲んでいる社長に
一言挨拶をいれると走って店を後にした。
「さて...
念のため松原さんにかよ子さんの迎えが来るまで
引き止めておいてほしいとは
頼んでおいたが...
イケメンに浮かれて忘れてないと良いのですが...」
総司は翼の出ていった扉を見つめ
フッと笑うと
氷と酒の入ったグラスをカランと回した。