一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「すみません...私は一人でタクシーで帰れますので...」
かよ子は肩に掛かった昇琉の手をほどくと
昇琉からゆっくりと体を離した。
「かよ子さん...」
すると昇琉の苦しげな声に
思わずかよ子が顔をあげた瞬間
突然肩を引き寄せられ
力強く抱き締められた。
「一色さん...?」
かよ子は何が起きているのか
思考がついていかず
されるがままに抱き締められている。
「かよ子さん...
帰したくないって言ったら困る...?」
昇琉は優しい声でかよ子の耳元にそっと呟いた。
「こ、困ります...」
もう一件、行きたいということだろうか...?
私はもう眠くて早く帰りたいです...
かよ子のまぶたがどんどん重くなる。
「一色さん...」
「ん?」
「眠い...」
かよ子は消え入りそうな声でそう呟くと
ガクッと頭が後ろに垂れて寝落ちしてしまった。
「えっ?かよ子さん?」
昇琉は急にかよ子の全体重が腕にのし掛かり
慌てて後ろに倒れないよう抱き寄せる。