一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
突然眠ってしまったかよ子に

昇琉が焦っていると


グイッ


今度は誰かに思いきり肩を引かれた。


昇琉はビックリして後ろを振り替える。

そこにはゼーゼーと息を切らせた翼の姿があった。


「社長!?」


思いもよらぬ人物に昇琉が大きく目を見開いた。


「ハァハァ...触るな......」


翼が息を切らしながら呟く。


「えっ...?」


「彼女に触るなと言ってるんだ!」


翼は怒りの形相で睨み付けた。


「神崎さん...?」


翼の怒鳴り声にかよ子が

寝ぼけ眼で呟いた。


翼はかよ子の手を引き昇琉から奪い取ると

ギュッと抱き締めた。


「かよ子さん...あんまり心配させないで...」


かよ子は翼に抱き締められた安心感から

再び目を閉じた。


翼は眠ってしまったかよ子を見て

フッと優しく微笑むと横向きに抱き上げた。


そして昇琉を冷めた目でみつめると


「彼女に二度と関わるな」


一言だけ言い放ち

かよ子を抱きかかえたまま

きびすを返すとスタスタと歩いていく。


終始、呆然と見つめていた昇琉だったが

ハッと我に返り思わず叫んだ。


「社長!!待ってください!」


「なんだよ?」


翼は面倒くさそうに振り替える


「それは社長命令ですか?」


昇琉は翼に真剣な眼差しを向ける。


「は?」


昇琉の真剣な表情に翼は眉を潜める。


「社長命令でも諦める気はないです」


しばらくの間、お互い睨み合い

重い空気が二人の間をながれていた。


「勝手にすればいい...

どのみち、彼女を譲る気はない」


翼は鋭い目付きで沈黙を破ると

きびすを返し、振り返ることなく

去っていった。
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