一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

「神崎翼がいないってどういうことよ!!」


二人が足を踏み入れると

いきなりエントランスホールに

女性の怒号が響き渡った。

思わず二人は歩みを止めて

声のする受付に目を向けた。


「榊原様、申し訳ございません!

神崎は本日、あいにく京都まで

出張中でございます。」


受付嬢たちが焦った様子で

目の前の女性に深々と頭を下げている。


「で?いつなら予定が空いているのよ?」


腕組みで受付嬢を見据える女性は

黒いVラインのミニ丈ワンピースに

グレイのジャケットを羽織り

黒のハイヒールを床に突っ立てて

力強く堂々と立っている。

目元はブラウンのサングラスで隠れてはいるが

かなりお怒りだということは

力んだ真っ赤な口元を見ればわかる。


「申し訳ございません!

神崎の予定は秘書の立花しか把握していないのですが

本日はその立花も神崎に同行しておりまして

私共では分かりかねます」


「は?

あの男、私をバカにするのも

いい加減にしなさいよ!!

電話しても今は忙しいと取り合いもしないのよ!」


受付嬢たちは目の前の女性の威圧感に

ただただ頭を下げ続けている。

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