一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「かよ子さん...
あの人が社長の婚約者の榊原凪沙です...」
瑠花がツンツンとかよ子の袖を引っ張ると
耳元でボソッと呟いた。
「えっ!?」
かよ子はビックリして思わず声を漏らしてしまい、
その声は静まり返っていたホールに響き渡った。
かよ子は咄嗟に口元を手で覆ったが
声に気づいた凪沙は振り返ると
サングラス越しにかよ子を見据えた。
そしてきびすを返すと、かよ子を見つめたまま
カツカツとヒールを鳴らしながら
こちらに向かってくる。
「か、かよ子さんヤバイです...」
瑠花は小声で呟くと
かよ子の横でわたわたと狼狽えている。
カツカツカツ...カツッ。
凪沙はかよ子の目の前で止まると
元々の背の高さとヒールの高さが相まって
かよ子を上からジッとサングラス越しに
見下ろしている。
口元を覆ったまま、固まっていたかよ子だったが
ハッと肩を震わすと勢いよく頭を下げた。
「す、すみません!」
かよ子は頭を下げたまま
緊張のあまりギュッ目をつぶると
「顔を上げなさい!」
頭上から凪沙の鋭い声が降ってきた。
おそるおそる顔をあげるかよ子に
凪沙はかよ子の顎に手をかけると
グイッと顔を上げさせた。
「あなた、綺麗な顔してるわね。名前は?」