一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない


「あ、あの...杉崎かよ子です...」


「かよ子...?

あっ!!かよ子ってあなたね!!」


そう言って凪沙はまるで宝物でもみつけたように

一気に顔を輝かせた。

かよ子は訳がわからず、顔を上げたまま

黒がちの目をパチパチとさせている。


「あなたはどこの部署?」


凪沙はかよ子の顎から手を離すと

サッとサングラスを取った。


「あっ、あの...部署というのはないです...

会社の一室を借りて絵を描いてるので...」


「そう...じゃあそこへ案内して!」


「えっ?で、でも、何もないですよ...?」


「いいわ!行くわよ!」


凪沙はワンピースの襟元にサングラスをかけると

カツカツとヒール鳴らしてエレベーターホールへと

歩き出した。

あまりの迫力に圧倒された二人は

凪沙の後ろ姿を見つめながら、

呆然と立ちすくんでいる。


「ありゃー、あのお嬢様行く気満々ですけど

かよ子さんどうします?」


凪沙はエレベーターまで行くと

立ち止まったままのかよ子に

遅いと言わんばかりにクイッと顎で

合図を送っている。


「行くしかないような気がします...」


凪沙のイライラとした様子に二人は慌てて

エレベーターへと走って行った。






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