一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

瑠花とエレベーターで別れたあと、

かよ子は凪沙を連れて

仕事部屋へとやってきた。


「ここがあなたの仕事部屋?

あっ、自己紹介まだったわよね?

私は榊原凪沙っていうの!ヨロシクね」


「あっ...はい...

こちらこそよろしくお願いします...」


凪沙はサラッと自己紹介を済ませると、

腕組みをしたまま

興味津々といったかんじてキョロキョロと

辺りを見渡している。

その間、かよ子は電気ポットのスイッチを入れると

二人分のカップを用意して、

そこへ紅茶のティーパックをいれた。


「確かに何もないわね」


「はい...でも、絵を描くだけですので...」


「これが、今描いてる絵ね!」


凪沙はキャンバスの前で足を止めると

のぞきこむようにジッと絵を眺めている。


「は、はい...まだ下書き段階なのですが...」


「いい絵ね...なんだか自由な感じがするわ!」


腕組みをして絵を眺めている凪沙は

一瞬、フッと笑みをこぼした。

かよ子は凪沙の言葉にハッと

目を見開いた。


「はい!その絵のテーマは自由なんです。」


かよ子は嬉しくなって緊張しているのも忘れて

目を輝かせた。

まるで絵を褒められた子どものように

嬉しそうなかよ子を見て凪沙も目を細めた。


「あなたは自由なのね...」


「えっ?...はい、そうですね...

でも、最近、本当の自由を与えてもらったような

気がします...」


かよ子はふと翼の顔を思い浮かべて

優しく微笑んだ。


「そう...羨ましいわ...」


凪沙は少し寂しそうな表情を浮かべる。

かよ子は凪沙の一瞬曇った表情に

違和感を覚えながらも

電気ポットを取るとカップにお湯を注いだ。


そして、 お湯が淡いオレンジ色に色づくと

ティーパックを取り出して

作業机の上にそっと置いた。


「あ、あの...榊原さん...良かったらどうぞ...」


「ありがとう!頂くわ!

それと凪沙でいいから!」


「じゃあ...凪沙さんで...」


凪沙はフッと微笑むと

作業机の前の椅子に足を組んで座り

紅茶の入ったカップを手に取った。
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