一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
かよ子はチクンと刺す胸の痛みをごまかすように
カップの紅茶を勢いよくすすった。
「あちっ!」
途端に舌をビリビリとした痛みが走り、
かよ子は涙目になりながらベッと舌を出した。
「何よ!?」
凪沙はギョッとして眉間にシワを寄せている。
「あ...すみません...
急いで飲んだら舌を火傷してしまって...」
「ドジね」
「はい...すみません...」
かよ子は恥ずかしさのあまり
頬を赤くしてうつむいた。
「ねえ?絵はいつから描いてるの?」
「えっ?...えと...幼稚園かな...
覚えてないくらい昔からです...」
「そう...絵の収入なんてたかが知れてるでしょ?
ご両親は反対しなかったの?」
「はい...
絵を描くことしか得意なことがなかったですし...」
「そう...かよ子さんが羨ましいわ。
私はずっと親に決められたレールを
歩んできたから。」
そう言う凪沙はどこか苦しそうな表情で
遠くを見つめている。