一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「あの...ご両親に凪沙さんの気持ちを
伝えてみてはどうですか...?」
かよ子の言葉に凪沙はカップをガチャンと置くと
キッとかよ子を睨み付け、一気にまくし立てた。
「そんなことしたって
無駄に決まってるじゃない!!
あなたの親とは違うわ!!」
「す、すみません...」
いきなり怒りをぶつける凪沙に
かよ子は驚いて申し訳なさそうに頭を下げた。
「い、いえ...いきなり悪かったわ...
かよ子さんに当たっても仕方ないのに...」
凪沙はばつが悪そうにカップに口をつけた。
「こちらこそ...凪沙さんの気持ちも考えずに...
でも......
ご両親はそれが凪沙さんの幸せだと
勘違いしてるんですね...」
かよ子の言葉に凪沙はハタと飲む手を止めた。
「フフッ...そんな風に考えたこともなかったわ...
あんな親でも一応、
私の幸せを考えてくれてるのかしら...
ありがた迷惑だけど...」
そして、フッと笑うと再びカップに口をつける。
「私の母も昔は人見知りだった私を心配して
色々と習い事をさせようとした時期も
あったようですが...
そのストレスで夜泣きがひどかったみたいで...
それからは自由にさせてもらってます...
でも......
きっとそのすべてが
私のことを思っての行動だったんですよね」
「フフッ...
かよ子さんといると毒気を抜かれるわね...
まあ、うちの親がそう簡単に
納得するようには思えないけど...
でもそう思えば
前よりかはあの人達を許すことができるわ」
「はい...」
穏やかな表情を向ける凪沙にかよ子も
自然と顔をほころばせた。
「あいつが入れ込むのも分かったわ」
「えっ?」
キョトンとしたかよ子を尻目に
凪沙は「ご馳走さま」と一言、言って立ち上がると
晴々とした表情をかよ子に向けた。
「気に入ったわ!
かよ子さん、お友達になりましょ!」
「へっ?」
「じゃあ、お邪魔したわね!また来るわ!」
凪沙は長い綺麗な巻き髪を振り乱して
きびすを返すと
颯爽と部屋を出ていった。