一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

「一色さん...?」


「今日はずっと外回りで
部屋に行くの遅くなってしまったから...
走って来て良かったー！！」


キョトンとした顔の私を見て
一色さんはニッと八重歯を覗かせた。

一色さんの屈託のない笑顔に私も笑みがこぼれた。

一色さんの笑顔は伝染してしまうな...

おかげで少し気持ちが紛れたような気がする...


そう思いながら、
私はハッと大切なことを思い出した。


「あっ、一色さん先日はご馳走さまでした！
あ、あと、ご迷惑をおかけしてごめんなさい」


私は勢いよく一色さんに向かって頭を下げる。


「いや、僕の方こそいきなり
あんなことしてごめんね...
でも、軽い気持ちでした訳じゃないから！」


「へっ？あんなこと．．．？」


一色さんのの言葉に私は頭を上げると
一色さんは顔を赤らめている。


一色さんは何のことを謝っているんだろう...


私は一色さんの言葉の意味を必死に考えるが
いくら考えても答えにたどり着かない。

それもそのはず、かよこは一色に抱き締められたことを忘れていたからだ。
もとい、その時は夢だと信じて疑わなかったからだ。


「あ、あのー、すみません...
瑠花さん達と別れた後って...」


申し訳なさそうに聞いてくる私に
一色さんは、もしや...と眉間にシワをよせる。


「えっ！まさか覚えてない？？」


「はい...」


「全く？？」


「す、すみません．．．」


その瞬間、一色さんの顔からサーッと血の気が引くと膝に手をついてガクッと前にうなだれた。


「えっ！？一色さん...？
すみません...やっぱり私何かしましたか...?」


ガックリとうなだれる一色さんを見て
私は慌てて駆け寄った。


一色さんは顔を上げるとオドオドと戸惑う私を前に困ったように微笑んだ。


「ごめんね、大丈夫だから！」


「え...でも...」


「ほんとに大丈夫なんだけど...
だけど、一つ聞いていいかな？」


「えっ？」


「かよ子さんと神崎さんはどういう関係？」


一色さんの思いがけない質問に
私は一瞬、思考が止まり言葉をつまらせた。