一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
神崎さん、どこにいるの?


神崎さんを探しに、会社まで走ってきた私は
トボトボと肩を落として出てきた。


会社に神崎さんはいなかった...


今日も仕事のはずなのに...


守衛さんも今日は神崎さんの姿を見ていないという。


気持ちが変わらないうちに
早く神崎さんに伝えたいのに...


私は立ち止まって振り返ると
目の前にそびえる高層ビルを見上げた。

私は何か神崎さんを探しだす手立てはないかと
必死に頭の中で考えを巡らせる。


そうだ...

立花さんなら神崎さんの居場所を
知っているはずだ。

一旦、家に帰って電話で聞いてみよう...


私はきびすを返すと、
今度は家に向かって走り出した。

元々、運動音痴の私は走ることなんてない。
途中何度も足がもつれそうになりながらも
無我夢中で走った。

今の気持ちが冷めないうちに
一刻も早く神崎さんに自分の気持ちを伝えたかったのだ。



気持ちを伝えてしまえば、
もう一緒にいられないかもしれない...


それでも、この気持ちはもう隠したくない...


神崎さんは初めて好きになった人だから...


初めて私に恋する気持ちを教えてくれた人だから...


私の息が限界に近づいてきた頃、
ようやく、マンションの外観が見えてきた。


しかし、私はふと入り口付近に目を落として
ピタリと足を止めた。


神崎さん...どうして?


マンションの自動ドアの前の
ちょっとした段数の階段に
神崎さんがスーツ姿のまま、顔を突っ伏して
しゃがみこんでいたのだ。


私は息を整えながら
はやる気持ちを抑えて
今度はゆっくりと神崎さんの元へ歩みを進めた。
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