一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

「神崎さん...?」


私の声に神崎さんはバッと顔を上げると
「かよ子さんっ」と立ち上がった。


「神崎さん...どうして...こんなとこに...?」


「朝からかよ子さんを探してたんだけど
見つからなくて...」


神崎さんは覇気のない声を絞り出すと
不安げに私を見つめる。


ああ、そうか．．．

私が神崎さんの手を思い切り振り程い
たりしたから、心配させてしまったんだ

「朝からずっとですか...?」

私は顔を歪めながら
震える声で呟く。


「かよ子さんの様子がおかしかったから...」


神崎さんのスーツは昨日のままで
顔にはかなり疲れの色がみえる。


「ごめんなさい...私のせいです...」


私の瞳から流れ出した大粒の涙は
あとからあとから湧いてきては
ポタポタと頬を伝って流れ落ちる。


神崎さんは私の涙に、慌てて駆け寄ると
なだめるように優しく頭を撫でる。


「かよ子さん...泣かないで...
俺がちゃんと連絡入れなかったからいけないんだ！
心配かけてごめん...」


神崎さんは困ったように微笑みかけながら
私の涙を指で拭った。

しかし、優しくされればされるほど私の瞳からは
涙が次から次へと溢れてくる。


「違うんです!
私が悪いんです...
神崎さんには凪沙さんがいるのにごめんなさい...」


「えっ？」


神崎さんは私の言葉にギョッと目を見開いた。

そして、頬をびしょびしょに濡らした私は
嗚咽をこらえるようにひとつ大きく息を吐くと
胸につかえていた想いを押し出した。


「私は．．．神崎さんが好きです...」


泣きながら呟いた私の思わぬ一言に
神崎さんは目を見開いて固まったままだ。




「神崎さんが好きなんです...
離れたくないです...
ずっとそばにいさせてください...」

一度、想いをこぼれた私の口からは
次々に想いが溢れだしていく。


神崎さんは泣きじゃくる私の肩を掴むと
そっと包み込むように抱き締めた。


「ごめん...かよ子さん...
やっぱり悪いのは僕だ...」


かよ子はヒクヒクッと翼の腕の中で
しゃくりをあげている。

翼は愛おしさから、かよ子の抱き締める腕に
ギュッと力がこめた。