一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
私は抱き締められながら、
フフッと思わず笑いがこぼれた。

すると、


「かよ子さん...眠くて死にそうだ...」


神崎さんは甘えたように呟いた。


「神崎さん...私もです」


私はそう言ってクスクスと笑っている。


「明日はデートだから帰って一緒に寝ようか」


「はい...」


二人はゆっくり体を離すと
マンションの入り口に目を向けて
ギョッと目を見開いた。


マンションの自動ドアのガラス越しに
コンシェルジュのお姉さん達が頬を赤くして
見ていたのだ。

お姉さん達は私たちと目が合うと、ハッと気まずそうに
目をそらし、散り散りに持ち場へと戻っていった。


「すっかり、ここが外だということを忘れてた...」


神崎さんは口に手をやって、恥ずかしさに
顔を赤らめている。


「私、顔から火が噴き出しそうです...」

私も両手で頬を覆って、
本当に火が噴いたように真っ赤だ。

私たちは顔を見合わせると
プッと思わずふきだした。


「かよ子さん、こうなったら恥の上塗りだ。」


神崎さんは笑顔で私に右手を差し出した。


「ここまで見られたら怖いものなしですね」


私はいたずらに微笑んで神崎さんの手を取ると
私たちは針のむしろのようなエントランスを
抜けて行った。
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