一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
でも、神崎さんのことだから
私が恋愛未経験ということくらい
薄々気付いてるよね...?
でも...もしも、気付いてなかったら...
やっぱり遠回しに伝えておいた方が
私としても気持ちが楽だ...
「か、神崎さん!」
「ん?」
ちょうど信号が赤に変わり車を止めると
神崎さんは腕をハンドルに伸せて
覗き込むようにしてこちらを見つめている。
「あ、あの...お気付きかもしれませんが
私...男の人とお付き合いするのは初めてで...」
私はうつむき加減の顔を真っ赤に染めて
膝に置いた手をギュッと握り締める。
「うん。かよ子さんが恋愛未経験だってことは気付いてるよ...
でも良かったよ...
もしかよ子さんに昔付き合ってる人がいたら
嫉妬でその男になにするか分からないよ」
神崎さんはフッと微笑むと
信号が青に変わり
再び前を向いてアクセルを踏み込んだ。
私はビックリして顔を上げるが
神崎さんは何もなかったように上機嫌で運転している。
何をするかわからないって...
冗談だよね...
うん、さすがに冗談に違いない...