一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
車に揺られて一時間、
都会から離れて随分と山奥まで走ってきた。


そして、車は高地にある
フラワーパークの駐車場に停車した。


休日ということもあり、山奥にも関わらず
駐車場の半数以上は車で埋め尽くされていた。


私が助手席のドアを開け、
車から降りると少しひんやりとした空気が
肌をかすめる。


「かよ子さん、寒くない?」


隣を歩く神崎さんから心配する声が降ってきた。

「ひんやりして気持ちいいですよ」
と、私はニコりと笑顔を返した。


「昔、小さい頃に家族で
一度来たことがあるんだけど
とても感動したのを覚えてるから
かよ子さんにもぜひ見せたかったんだ」


そう言って、神崎さんは昔を懐かしむように穏やかに目を細める。




エスコートするように少し前を歩く神崎さんは小高い丘の頂上でハタと足を止めた。


すぐ後から続いて歩いていた私も
足を止めると
眼下に広がる絶景に目を輝かせた。


「綺麗...」


そこには雄大な山々を背景に
チューリップやルピナスの花が
色鮮やかに悠然と咲き誇っていたのだ。


「かよ子さんが喜んでくれてうれしいよ。
近くで見てみようか」


そう言って左手を差し出した神崎さんの手に
私は手を重ねた。


そして、綺麗に列をなした花々の間を
ゆっくりと嬉々と目を輝かせながら
私達は歩きだした。


広大な自然の中に遠くまで鮮やかに染める一面の花はまるでアートのようで感動に心踊らせる。

私達は時間を忘れて美しく咲き誇る花々に
心癒される時を過ごした。

< 189 / 343 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop