一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
それから、フラワーパークを出た私たちは
軽く昼食をとった後、
陶芸教室で絵付け体験にも挑戦した。


お皿に絵を描くという単純な作業なのに
なぜだか神崎さんの表情は険しいものだった。


その理由は出来上がって分かった。


「神崎さん...これはウサギですか...?」


神崎さんのお皿の真ん中に
奇妙な動物らしき生き物が描かれている。


耳が長いのでウサギと判断したのだけど...


「違う...犬だよ」


若干、ふてくされ気味に応える神崎さんに
思わずかよ子は顔を隠して
肩を小刻みに震わす。


「かよ子さん笑ってるな?」


「ごめんなさい...
ふてくされてる神崎さんが可愛くて...」


神崎さんはムスッと顔を赤くして黙り込んでいる。


「神崎さん、機嫌直してください。
じゃあ、私のと交換して使いましょ?」


私は「ねっ?」と神崎さんの顔を覗き込む。


神崎さんは覗き込む私に頬を染めて
顔を反らす。


「折角、かよ子さんは売り物みたいに
上手くかけてるのに、悪いよ...」


「そんなことないです...
私は神崎さんが作ってくれたお皿を使いたいです」


神崎さんは私の言葉に益々顔を赤く染めると
反らしたままの目線を私に戻した。


「それに神崎さんのお皿のワンちゃんを見てたらいつも笑顔になりそうです」


私はニコッと無邪気な笑顔を向ける。


そんな私を見て
「それは、喜んでいいものか...」
と、神崎さんは腕組みをしてウーンと唸っていた。



神崎さんとのデートの時間は
とても楽しくて、あっという間に過ぎていった。


神崎さんの知らない一面を見るたびに
私の神崎さんへの気持ちはどんどん膨らんでいく...


ずっと一緒にいられますように...と
旅館に向かう車の中で私は強く願った。



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