一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
夕食を済ませると、かよ子さんは
いそいそとタオルの準備をし始めた。


「私、もう一度、外の露天風呂に入ってきますね!神崎さんはどうします?」


「僕は部屋に付いてる露天風呂に入るよ」

そう言いながら俺は座椅子に座ったまま、
グーッと伸びをした。


「そうですか...」


「かよ子さんも一緒に露天風呂入ってみる?」


俺は冗談半分にニヤリとかよ子さんを見やる。


しかし、かよ子さんは真っ赤な顔で
ジッと俺を見つめたまま、沈黙している。


・・・・・・・


「あのっ......」


口を開きかけたかよ子さんは、再び沈黙。


お互い見つめあったまま、
あまりにも長い沈黙に
俺の心臓の音がドドドドドッと
どんどん大きさを増していく。


俺はとうとう沈黙に堪えれなくなり
口を開こうとした、その時...


「や、やっぱり、恥ずかしいです!!」


かよ子さんは真っ赤な顔でスッと立ち上がると「大浴場に行ってきます」
と、パタパタと部屋を出て行った。


残された俺は呆然と固まったまま、
かよ子さんの出て行った扉を見つめる。



えっ?


えっ!?


かよ子さん...さっきの間は何...?


ちょっとは俺と一緒に入るかどうか
考えてくれたってことだろうか...?


かよ子さん...


この状況でその思わせぶりな態度は無しだよ!


どうにもこうにも期待に胸が膨らんでしまう...


俺は喉の奥からせりあがってきそうなほど、
跳ねている心臓を押し止めるように
胸に手を当てた。


もう...理性を保てる自信なんて
これっぽっちもない...


俺は天井を見上げると、
まだ胸に残るドキドキを押し出すように
溜め息をこぼした。


そして、重い足取りで
部屋の脱衣場へと入って行った。






























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