一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

暗がりのなか、窓から射し込む月明かりを頼りに辺りを見渡した。


すると、神崎さんは窓際のスペースに置かれた小さなテーブルセットの椅子に座っていた。


神崎さんは缶ビールを片手に
私に気付く様子もなく
窓から外の景色をボーッと眺めている。


白地に紺色のススキ柄の浴衣が
月明かりに照らされて
ポワァっと妖艶に輝いて見える。


神崎さんも眠れないのだろうか...


私はそっと足を踏み出すと
「神崎さん...」小さな声で呟いた。


私の声に神崎さんがバッと振り返る。


「かよ子さん...?」


神崎さんはビックリした様子で目を見開いている。


「ごめん...起こしてしまったかな...?」


「いえ...眠れないんですか...?」


私の心配げな表情に
神崎さんは気まずそうに苦笑いした。


「いや、違うんだ...
情けない話、かよ子さんの隣で
自分の理性を保てる自信がなくて...」


「ごめんね」と困ったように笑う神崎さんに
私は申し訳無さに顔を歪ませた。

そして、ギュッと浴衣の布地を握りしめた。


神崎さんはこんなにも
私のことを思って我慢してくれていたなんて...


私はただこわいという理由で
逃げてばかりだった...


神崎さんの優しさに甘えていたんだ...


    
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