一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
私は唇を噛み締めると
神崎さんの座る椅子までゆっくりと足を進めた。


そして神崎さんの前で止まるとうつむいたまま、震える声で呟いた。


「あの..か、神崎さん...
初めてなので何をどうしていいかも
分からないのですが、私に教えてくれませんか...?」


月明かりに照らされたかよ子の頬は
恥ずかしさで赤く染まっている。

そんなかよ子に見つめたまま、
固まっていた翼だったが、ふと我に返った。


「か、かよ子さん...無理してない?」


神崎さんの言葉に私は思いきり
顔を横に振った。


「無理なんかしてないです...
本当はずっと前から決心は固まっていたんです。
ただ、初めてなので怖くて...
でも、もう逃げません
私も神崎さんに触れてほしいんです」


私は決意した瞳で神崎さんを見つめる。


神崎さんは優しく微笑みながら
私の手を掴んで引き寄せると
そっと唇を重ねた。

そして、ゆっくりと唇を離すと
揺れる瞳で私を見上げた。


「かよ子さん...もう止めてあげられないよ?」


私は返事の代わりにコクンとうなずく。


その瞬間、神崎さんが立ち上がると同時に
私はフワッと抱き上げられる。


私はドキッと心臓が跳ねて
思わず神崎さんの首もとにギュッとしがみついた。



    
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