一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

すると、カチッという音と共に
部屋の中がボンヤリとした
オレンジ色の灯りに包まれた。


神崎さんが枕元の電気スタンドのスイッチを押したのだ。


「えっ!電気つけるんですか!?」


私は咄嗟に起き上がろうとするが
神崎さんの手に両手をシーツに縫い付けられてそれを阻まれる。


「電気と言っても間接照明だよ?」


神崎さんは悪怯れる様子もなく
それどころか目が嬉しくて
たまらないと語りかけるように
上から私を見下ろしている。


「で、でも...これじゃ丸見えじゃないですか..」


私は顔を焦りの色でにじませた。


神崎さんはフッと悪戯に笑みをこぼすと
「そのためだよ...」
と、ゆっくりと顔を近づけてくる。


私は反論しようと口を開きかけて
神崎さんの重なった唇にそれを阻止された。


「ん...っ」


優しく私の唇を求める神崎さんの唇は
次第に私の思考を停止させていく。


私の口の中に入り込んできた神崎さんの舌は
ほのかにアルコールをまとっていて
私の舌と絡まる度にふわふわとまるで酔った感覚に襲われていく。


どのくらいの間、
神崎さんのキスに酔いしれていたのだろうか...



神崎さんの手が優しく私に触れてきて、ピクンと体が跳ねた。


「ンっ...」


甘いキスを落としながら、触れる手に
羞恥心がこみ上げてきて、きっと私の顔は今、真っ赤になっているだろう。





神崎さんはゆっくりと唇を離し
私の顔の横に両手をついたまま、
見下ろすと真っ赤な顔の私を見て
フッと頬を緩めた。



私は恥ずかしさにパッと手で
胸を覆い隠す。

「や、やっぱり、電気を消してください」


「やだ」


神崎さんは子どものように駄々をこねる。


「や、やだって言われましても...」


神崎さんは私の言葉を無視して
再び唇にキスを落とした。



神崎さんは私の緊張を溶かすように
唇、瞼、頬、首筋に優しくキスを落としていく。


嬉しさと恥ずかしさから
私の瞳からキラキラと輝く雫が
流れ落ちてシーツにポタッと染みをつくっていく。


「かよ子さん...?」


それを見た神崎さんの心配そうな声が降ってきて私はそっと目を開いた。

神崎さんは私の頬を両手で包み込むと
心配げに顔を覗き込む。


「怖い?」


神崎さんの言葉に私はフルフルと首を横に振る。

「大丈夫です..ただ、恥ずかしくて涙が溢れてしまうんです」

そんな私の頬に伝う涙を
神崎さんは愛おしそうな瞳を向けて
優しく拭う。

「かよ子さん...好きだよ...」


私はその言葉に涙を流しながら
コクコクとうなずいた。


「私も...神崎さんが大好きです...」

神崎さんは優しく微笑みながら
ゆっくりと顔を近づけると
私の唇に深く甘いキスを落とした。


甘い口付けに私は思わず
神崎さんの背中に手をまわすと
それを合図に噛み付くような
激しいキスに変わっていく。


「ん..」



自分からこんな耳を塞ぎたくなるような
声が出るなんて信じられなかった...



今まで経験したことのないほど恥ずかしいのに私はこの快感を求めてしまう


「あっ...」


今まで自分から発したことのない声が口から溢れる。


「かよ子さんの感じてる声可愛い..」

神崎さんは顔をこちらに向けてフッと微笑んだ。


「やだっ、、恥ずかしいこと言わないでくださいっ...」


私の恥じらう声に神崎さんは次第に唇を脇腹に這わせはじめた。


「くすぐったいですっ」

私は体を捻って抵抗した。

神崎さんは私の姿に嬉しそうに体を起こすと 自分の浴衣を荒々しく脱ぎ捨てた。


神崎さんの男らしい胸板が 淡い灯りの中で浮かび上がった。


思わず見とれてしまった私は 神崎さんの視線に気づいて、サッと瞳を逸らす。



「ハァ...かよ子さんの声、可愛いから もっと聞かせて...」


耳元で囁かれる神崎さんの色気のある声が 余計に私の羞恥を煽る。

私は声を我慢するように、唇を噛んだ。

そんな私に神崎さんはフッと笑うと 私の手を取り、指を絡めた。

そして、かよ子の額にキスを落とすと
「かよ子さん...そろそろ一つになっていい?」
見つめ合ったまま、囁く。

神崎さんの余裕のない瞳に 私は涙で瞳を潤ませながら コクンと一つうなずいた。


遠慮がちに私の中に入ってきた
神崎さんのそれはとても優しくて温かかった。


貫くような痛みはあったけど
何度も「大丈夫...?」と
神崎さんが心配そうに覗きこんでくるから
私は涙を流しながら笑ってしまった。



こんなにも優しい痛みがあるなんて
私は知らなかった...


「かよ子さん......愛してる...」


神崎さんの言葉に私の胸は幸せな気持ちで満たされていく。



「神崎さん.....あぁ....」


一層強くなる律動と比例して
大きく膨らんだ快感は限界を迎え、
二人同時に達してしまった。


肩で息をしながら放心状態の私に
神崎さんは包み込むような笑みを浮かべると
「かよ子さん...愛してるよ...」

もう一度、耳元でそっと囁いて優しくキスをした。


私は目を細め微笑み返した。


“神崎さん、私も愛してます”


私はこの夜、
神崎さんから受ける優しい痛みに
今までに経験したことのないほど幸福に包まれていた。

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