一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「社長...ニヤニヤして気持ち悪いですよ」


結婚情報誌を食い入るように眺めていた俺は
総司の声にビクッと肩を震わすと
机の上に広げられた何冊もの情報誌を
慌てて机の引き出しへとしまいこんだ。


「ノックぐらいしろよ!!」


総司はドアの前に立ち、
「ノックしましたよ」
冷ややかな視線を向けている。


「しかし...
気付かないくらい熱心に
お仕事されてると思いきや...」


総司はやれやれと肩をすくめる。


「勘違いするなよ?
これは建設中のホテルウェディングの
参考資料だ」


俺はきまりが悪そうに
総司から目線を逸らすと、机の上に置いてあるコーヒーを口に含んだ。


「あれっ?
先程机に広げられた雑誌の中に出産育児本が混ざっていたのは私の気のせいでしょうか...?」


総司はわざとらしく、首をかしげる。


俺はコーヒーカップを持ったまま、小さい声で「き、気のせいだ...」とゴニョゴニョと口ごもる。


そんな俺に、総司はニヤリと笑みを浮かべると「まあ、さすがに昨日今日お付き合いしたばかりで結婚出産まで先走るはずはないですよね...
いくら心の広いかよ子さんでもドン引きですよ」

わざとらしく「ハッハッハッハ」と笑う。


俺はジロリと鋭い視線を向ける。

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