一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「ごめんなさい...
私、一色さんのことは好きですが
それは恋愛とかそういうのではなくて...」
「うん...
かよ子さんが僕のこと恋愛対象として
見てないことはずっと気付いてたよ。
それでもかよ子さんに
僕の気持ちを知ってほしかったんだ。
結果的に駄目にはなっちゃったけど
こんなに一心に誰かのことを好きになったのは初めてで...楽しかった...
かよ子さんに出逢えたことには感謝してるんだ。」
そう言って、
キラキラとした笑みを向ける一色さんに
つられて目を細める。
そんな私を見て一色さんは
「まあ、まだ完全には吹っ切れてはないんだけどね」
と、シシッと八重歯を覗かせた。
「私も一色さんのその笑顔に
いつも励まされてました。
私を好きだと言ってくれたことも
とても嬉しかったです。
一色さん、ありがとうございました」
私はもう一度、深く頭を下げた。
「う~ん...『ございました』だと
もうこれっきりみたいで嫌だな...
これからは友達として
たまに絵を見に来たいんだけど、ダメかな...?」
「いえ、ダメじゃないないです」
と、私は顔を強く横に振る。
「一色さんにそう言ってもらえて
ホッとしました。
これからも友達としてよろしくお願いします」
一色さんは「良かった~」と
心底、安心したように息をはいた。
「それじゃあ、そろそろ仕事に戻るよ」
きびすを返してドアを開けた一色さんは
思い出したように振り返った。
「あっ、そういえば、妹の誕生日プレゼント...
トートバックも髪ゴムもとても喜んでたよ!」
「えっ!本当ですか!!
それは良かったです...」
私はホッとして思わず笑みをこぼした。
「本当にありがとう!じゃあまたね!」
一色さんはニッと八重歯を覗かせて
自分の部署へと帰って言った。