一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
良かった...

告白される経験なんてなかったから
どうしようかと思っていたけど
気まずいまま、お別れにならなくて良かった。

私はすっきりした気持ちで
腕をグーッと上に挙げて伸びをした。

すると、ハタと自分の手に白い絵の具を
握っていたことに気付く。


あっ、神崎さん!!


神崎さんのことを思い出したと同時に
バアンと
部屋の扉が勢いよく開いた。



私はビックリして
思わず白い絵の具を床に落としてしまう。


「かよ子さん!!」


神崎さんはドアに手をかけたまま、
ハアハアと息を切らしている。


「神崎さん...」


私は驚きのあまり目を見開いて
固まっている。


神崎さんは少し辺りを見渡すと
「一色は?」
肩で息をしながら聞いてきた。


「一色さんなら先程帰られましたけど...
すれ違いませんでしたか...?」


私の言葉に神崎さんは「いや...」と
一言呟くと、大きく息を吸って
乱れた呼吸を整えている。


「一色は何しに来たの?」

神崎さんは今度は少し鋭い視線を私に向けた。


「えっ?...えっと...」


神崎さんに一色さんから告白されて
断ったことを伝えてもいいのだろうか...

一色さんの気持ちやプライドを考えると
たとえ神崎さんでも安易に話したくはない...


「僕には話せないこと?」


口ごもる私に神崎さんは眉をひそめる。


「あの...話せないというか...
話したくないというか...」


何と説明したら良いか分からず、
下を向いたまま口籠った。

    
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