一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
私は一歩後ずさりすると
「いきなり、こんなことひどいです!」
涙の滲んだ瞳で神崎さんをキッと睨んだ。
「ごめんっ...」
神崎さんはそう呟くとおびえきった仔猫のような表情を浮かべている。
「神崎さん...?」
ショックを受けて真っ青な神崎さんに
私の先程までの怒りは削がれてしまう。
「かよ子さん、ごめん...」
神崎さんはその場に急にしゃがみこむと
意気消沈した様子で項垂れた。
私は慌てて神崎さんに駆け寄ると
一緒にその場にしゃがみこんだ。
「神崎さん..あの....大丈夫ですから、
顔をあげてください」
私の言葉にも神崎さんはふさぎこんでしまって顔を上げようとはしない。
「自分が情けなくて顔があげられない....
かよ子さんのことになると
自分がどうしても押さえられくなるんだ...
嫌われるようなことはしたくないのに...」
しょんぼりとしたままの神崎さんに
私は困ったように微笑むと
神崎さんの頭にそっと手を置いた。
まるで猫の背を撫でるように
優しくサワサワと撫で始めた。
「嫌いになんてなれるわけ
ないじゃないですか...」
私の言葉に神崎さんは
塞ぎ込んでいた頭を上げた。
私は手を引っ込めると
弱りきった顔の神崎さんを
慰めるように柔らかい笑顔を向けた。