一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

しかし、なぜだろう...気持ちを騙すように走らせる筆の色がなぜかいつもより暗く見えるのは...

私はふと筆を止めた。

その時、

トントン


ふいに自室のドアをノックする音が
響いて私の心臓がドキリと跳ね上がった


「カヨ子さん...

お風呂お先にいただきました。
先ほどはビックリさせてすみません。
女性に対して失礼ですよね...」


神崎さんの悲しそうな声に
何か返事をかえそうとするが
喉の奥に何かつっかえたように
声がでない。


「今日は色々ありがとうございました。
ご飯もとても美味しかったです...
.....................。
それではおやすみなさい…」

そう言って名残惜しげに去っていく翼に
私の胸はズキンと罪悪感で疼く。

立ち上がってドアの前まで足を進めると
ドアノブに手を掛けて回そうとするが
逡巡してやめた。


そしてキャンバスに向かうことなく
ベッドにうつ伏せのままダイブした


はぁ...


やっぱり私は母やメグ以外の人と
上手く付き合うことはできないんだ


結局は相手に自分の思ってることを
うまく伝えられなくて
傷つけてしまう...



それに
唯一の取り柄の絵さえ
描けなくなってしまっている...



でも明日、車の修理が終われば
神崎さんと会うことはないだろう



そしたらまたいつもの生活に戻れる...


自分にそう言い聞かせて
そのまま眠りについた