一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
神崎さんは紅潮した顔を片手で隠す。


「急に大きい声出してごめん...
かよ子さんは特別だから気にしないで...」


私の先程の痛みとは違って
今度はキュンと胸が締めつけれた。


「ありがとうございます...」


そして、私は神崎さんが私を気遣って言ってくれているのだと感じてお礼をいいながら笑顔を向けた。

神崎さんも「うん」とホッとしたように頬を緩ませた。


「翼はかよ子ちゃんといるとまるで別人のようだな」


お義父さんはお猪口でお酒を飲みながら
ハッハッハッと愉快そうに声を張り上げた。


神崎さんは「だから来るの嫌だったんだよ...」と居心地が悪そうに頭を掻く。


「かよ子さん、ごめんね!
社長をからかうつもりが無神経なこと
言ってしまったよ...」


総司さんが顔の前で手を合わせながら
申し訳なさそうに呟いた。


「いえ、神崎さんの昔の話を聞けて
楽しかったです!
また、教えてくださいね」

私は総司さんに気を遣わせないよう、
ニッコリと微笑んだ。


「私が知ってることなら何でも
教えますよ!
なので、今度二人でお食事でもしながら...」


総司さんがそう言いかけると
「人の彼女にちょっかい出すんじゃない!」
と、神崎さんの投げたおしぼりが
総司さんの額に命中した。


「振られてしまえ...」
と、おしぼりを手に総司さんがブツブツと呟く。


そんな二人の夫婦漫才のようなやり取りに
私は目に涙を溜めて笑い出した。


可笑しそうに笑う私に
三人も和やかに頬笑むと
「さあ、まだまだあるから
しっかり食べておくれ!」
お義父さんが満足そうに口を開いた。


それから、楽しい宴は夜遅くまで続いた。
< 223 / 343 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop