一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
宴も終わり、私と神崎さんがマンションに着いた頃には時刻はすでに深夜をまわっていた。
先に私がシャワーを浴びて
交代で神崎さんがお風呂に入った。
私は浴室からシャワーの音が
聞こえてくるのを待ってから、
テーブルの上に置いていた自分のバックを手に取った。
そして、バックから1枚の写真を取り出すと、写真を眺めて思わずフフッと目を細めた。
写真の中の神崎さんは小学校低学年くらいだろうか...
神崎さんを間に挟んで家族三人、とても幸せそうに微笑んでいる。
きっと楽しい時間だったに違いない...
とても素敵な写真だったので
お義父さんに頼んで神崎さんには内緒で1枚もらってきたのだ。
私がしばらくの間、写真を眺めていると
バタンッ
浴室の扉の閉まる音が聞こえてきて
ビクッと肩を震わせた。
や、やばい...
私は急いでバッグの中から
手帳を取り出すと
写真を間に挟み込み、
再びバックへとおさめた。
そして、慌ててバッグを元のテーブルへと戻す。
すると、まだお酒が抜けてない神崎さんは
鼻歌交じりに上機嫌でリビングへと入ってきた。
「ん?何してたの?」
慌ててソファーに着いたところを
見られたようで、神崎さんは不思議そうに
問い掛けてきた。
「ひ、ひみつです...」
私は隠し事に胸をドキドキさせながら
ソファのクッションをおもむろに掴むと、
それをギュッと抱き締めた。
神崎さんは「なに?気になるんだけど」と言いながら、キッチンへ向かうと冷蔵庫からミネラルフォーターのペットボトルを取り出した。
そして、それを持って私の隣に腰を下ろす。
「ねぇ、ひみつって何?」
どうしても気になる神崎さんは
私の顔を横から覗き込みながら
もう一度聞いてきた。
「話してしまったら
それはひみつじゃないですから!」
別に隠すようなことではないのだけど
神崎さんの子ども頃の写真を宝物にしようと
思っていたのを知られるのは恥ずかしい...
私は神崎さんに悟られまいと慌てて目を反らす。
「かよ子さんのケチ」
神崎さんは拗ねたように口を尖らせて言った。