一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「完成したらここに一緒に泊まりに来ようか?」


神崎さんは横から私の顔を覗き込むように聞いてきた。


「はい!!」


私はニッコリと微笑んだあと、
少しう~んと考え込んでから、
「でも...大悪魔の社長が泊まりに来たら
従業員の方が萎縮しちゃいませんか...?」
と、上目使いにたずねた。


私の言葉に神崎さんがピクリと眉を動かした。

「そのあだ名...誰から...?」


私はフフッと意地悪に微笑むと
「さあ...誰でしょう?」
フィッと目を反らした。


神崎さんははあっと息を吐くと
「まあ...そんなことを吹き込むヤツは
一人しかいないが...」
諦めたように肩を落とした。


「フフッ...でも、大悪魔って恐れられてても
私はそんな神崎さんも好きですよ?」


かよ子は花が揺れるように優しく微笑んだ。

翼はポッと頬を染めるとパッと視線を反らす。


「かよ子さん...?」


「はい?」


「こんなところで大悪魔を煽ったら
どうなるか分かってる?」


神崎さんが悪魔の笑顔をのぞかせる。


私はあわあわと慌て出すと
「やっぱり、いつもの神崎さんがいいです...」
きびすを返して
逃げるようにホテルの中へと入って行った。


そんなかよ子に翼はハッと短く笑うと
「かよ子さん...
大悪魔をからかうなんて百万年早いよ?」
ボソッと呟いて後を追った。
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