一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「かよ子さん...?」


俺の声にかよ子さんは目線を絵画からこちらに向けた。


嬉々とした表情を浮かべていたかよ子さんだったが俺の真剣な眼差しに「ん?」と
不思議そうに顔を傾ける。


俺はかよ子さんの瞳を見つめながら
優しく、それでいて緊張感の含んだ声で
語り始めた。


「かよ子さん...
僕はずっとかよ子さんのそばにいたいと思ってる...
その為には今度かよ子さんを母に紹介したい...
母は良くも悪くも、自分にも他人にも
厳しい人だ...
かよ子さんにも厳しいことを言うかもしれない...
それでも、一緒にいるためには母を説得しなければならない...
長期戦になるかもしれないけど、
一緒に説得して母に認めてもらいたいんだ...」


不安げに瞳を揺らす俺に
かよ子さんは優しく笑みを浮かべると
コクンとうなづいてみせた。


「私も神崎さんのお母様に認めてもらいたいです...
なかなか自分の思いを伝えるのは
得意ではないのですが、
私なりに頑張ってみます...」


そう言ってかよ子さんは天使のように
ふんわりと柔らかい笑顔を俺に向けた。


その笑顔につられて俺の少し強ばっていた表情も自然と緩む。


「それじゃあ、お腹も空いてきたことだし
そろそろ行こうか...」


俺はかよ子さんの前に手を出すと
かよ子さんは迷うことなく自分の手を重ねた。


「それにしても、そのドレス、
かよ子さんにとてもよく似合ってるね...
脱いでしまうのが勿体ないな...
いっそのこと買ってしまおうか?」


俺はかよ子さんのウエディングドレス姿を
まじまじと眺めながら、言った。


かよ子さんはパッと目線を下に移すと
「だ、大丈夫ですっ。こ、これは、またいつか...」
ゴニョゴニョと耳まで真っ赤にして呟く。


ほんとにかよ子さんはいちいち可愛くて困る...


今すぐこの可愛い花嫁をさらいたくなってしまうじゃないか...


俺はフワッとかよ子さんを抱き上げると
「それなら早く母さん説得しないとな!!」
そのまま螺旋階段を上がっていく。


「か、神崎さん...危ないです...」


かよ子さんはあまりの高さに俺の首元にギュッとしがみついた。


「大丈夫...死んでも離さないから...」

俺はかよ子さんの耳もとでボソッと呟くと
スタスタと螺旋階段を上がっていった。



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