一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
そして、私は神崎さんと母と義父の四人で
テーブルを囲んでいる。


「神崎さん、その節はわざわざ
我が家まで挨拶に足を運んでいただいて
ありがとうございます」


母は向かいに座る神崎さんに頭を下げた。


「いえいえ、こちらこそ急に押し掛けて
しまって申し訳ありませんでした。」


「神崎さん、挨拶ってどういうことですか?」


私は隣の神崎さんの顔を覗き込んだ。


「あぁ...かよ子さんと一緒に住み出してから
少し経った頃に、このホテルの視察のついでに挨拶に伺ってたんだ」


神崎さんは決まり悪そうに
フッと私から目を反らす。


「えっ!?私、そんなこと聞いてません!」


私は思わず、飲んでいたジュースを
吹き出しそうになった。


「言ってないからな...」


「何で教えてくれなかったんですか?」


私はジトーっとした目つきで睨む。


「かよ子さんに挨拶に行くって言ったら
ついて行くって絶対に言うだろ?
もし、帰って家が恋しくなったら困ると思ったんだ」


悪怯れる様子もなく、淡々と話す神崎さんに
私はハァッと息を吐いた。


その様子を母が微笑ましそうに見つめている。

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