一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

それから神崎さんは気を遣っているのか、
私と言葉を交わすことなく帰る支度を始めた。
そんな神崎さんに寂しく感じてしまう私は、自分本意のなにものでもない。

避けるような態度をとってるのは私なのに。

「それじゃあ。
大変お世話になりました。
しかもサンドイッチまで頂いて
ありがとうございます」

すっかり直った車の横で
相変わらず爽やかな笑顔を向けてお礼を言う神崎さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「い、いえ、
何のお構いもできず...
すみません...」

私は俯いたままペコリと頭を下げた。


これで神崎さんと
一生会うことはないだろう...

ただ、明日からまたいつも通りの一人きりの
生活が待っているだけだ。

・・・・・・・。


しかし
神崎さんは何も言葉を発しないまま
俯いた私の視線の先の綺麗な革靴も
動く気配がない。


そして少しの沈黙の後で
神崎さんから発せられた言葉は
私にとって意外なものだった。


「カヨ子さん、
今度また時間のあるときに、お礼も兼ねてお食事に行きませんか？」


「えっ？」

私は神崎さんの言葉にびっくりして顔を上げた。


「あまり気が乗りませんか？」

神崎さんは自信なさげに微笑んだ。


「す、すみません！

神崎さんが嫌とかではなく
私自身の問題で...
あまり人と関わることが苦手なので...
御礼はお気持ちだけで結構ですので...」


そう言って私は胸の前で両手を振ってみせた。