一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
神崎さんは可笑しそうに笑う私を見て目を細めると「じゃあ、結婚式を祝いに行こうか」
右手を差し出した。


私は「はい」と神崎さんの差し出した手を取った。

そして私達はゆっくりとした歩調で
ホテルへと歩き出す。


「そう言えば、かよ子さん...
勝手にアトリエに帰ったら、
僕の専属の秘書になる約束だったよね」


神崎さんは思い出したようにニヤリと微笑みながら、隣で歩く私に目を移す。


私はギクーッと肩を震わすと
「そ、そんな約束した覚えないです」
手を繋いだまま、明後日の方向を向く。



「あっ、かよ子さん、ずるいなー」



「そ、そんなことより、早く行かないと
式が始まっちゃいますよ!」



「あっ、また話をそらす気だな~?」



「...ス、スピーチ、緊張するなぁ...」



「完全にそらしたな...」



二人は楽しそうに掛け合いながら
ホテルへと入って行く。



そんな二人を空に輝き出した一番星が
優しく見守っていた。
< 320 / 343 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop