一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「杉崎様は普段、メイクはされないのですか?」
メイクさんの技術を食い入るように
眺めていた私は急に話をふられて
あたふたしながら言葉を選ぶ。
「えっ!あっ、は、はい...
あまり....
日焼け止めとリップくらいしか...」
今時、日焼け止めとリップくらいしか
化粧しない女性なんて珍しいだろう。
私は恥ずかしさのあまり声が
尻つぼみになっていく。
「どおりでお肌が美しいはずですよね。
羨ましいです。
でも、素っぴんでこれだけお綺麗なのに
勿体無いですよ?
たまにはメイクして社長に
違う一面を見せるのもいいと思いますよ」
「えっ?」
私が鏡越しにメイク師のお姉さんに目を
向けると
「杉崎様が社長のフィアンセだってことは
ここのホテルのスタッフは皆知ってますよ」
メイク師さんはフフっと含んだ笑みを浮かべた。
私は顔が熱くなってうつむいた。
「さっ!社長を驚かせてやりましょう」
メイク師さんはなんだかウキウキとした様子で今度はヘアアレンジへと取りかかった。
ほんとに、驚くほど変わるのかな...
私は少しの期待と不安を胸に
自分の変わっていく姿をじっと眺めていた。