一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
神崎さんは、慣れたように
石畳を進んでいき玄関を開けた。


「神崎さまお待ちしておりました」

すると、すぐに着物を着た女将さんが私達を出迎えてくれた。

「少し遅くなってすみません」


「いえいえ、遠いところを
わざわざご足労頂きありがとうございます。
お部屋をご案内致します」


女将に出迎えられ、私達は御座敷へと通された。
慣れない雰囲気に緊張が増してくる。


「後程、料理長が挨拶にまいりますので。
ごゆっくりどうぞ」


女将さんがさがるとすぐ
神崎さんは心配そうに
向かいに座る私の顔を覗き込んできた。


「大丈夫?すまない。
もう少し気軽に入れるような
ところを選ぶべきだったな...」


「いえ...
とっても素敵な料亭で
少しびっくりしてるだけです。」


「そうか。それなら良かった。
味は絶対保証するから」


神崎さんの言うとおり
次から次へと運ばれてくる料理は
どれも美味しくて
思わず顔をほころんでしまう。


「こんな美味しい料理は初めてです」


神崎さんはいつもこんな美味しいものを
食べているんだろう。


この前、振る舞った手料理が
恥ずかしくなっちゃう...


「喜んでもらえて良かった。
でも俺はカヨ子さんの肉じゃがのほうが
旨かったよ」


そう言って頬笑む神崎さんに
自分の考えてたことが
見透かされたようで
急に恥ずかしくなり俯いた。


トントン

するとノックと共に襖が開いて料理長が入ってきた。


    
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