一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「ごちそうさまです。
料理とても美味しかったです」


食事を終えて、
助手席に乗り込むと隣に座る神崎さんにお礼を言った。


「あぁ、美味しかったな。
かよこさんの友人の婚約者にも会えたし。
今度はその大切な友人にも会ってみたいな...」


神崎さんはそう言いながら優しく微笑みかける


胸にズキッと痛みが走って
思わず胸を押さえる。


このままずるずると流されて
先伸ばしにしてはいけない...


ちゃんとしなきゃ...


ふうっと息を吐くと
神崎さんに真っ直ぐ向き合い
意を決して口を開いた


「神崎さん、今日はとても楽しかったです。

ありがとうございました。
それでやっぱり...あの...
私これ以上神崎さんと
お会いすることはできません!」



「どうしてできないの?」


「えっ?」

神崎さんは腕を組んで
運転席の背もたれに寄りかかったまま
私に問い掛けてきた。

どうして...?
そんなこと愚問だ...
誰がどう見たってしがない画家の私と
グループ会社のトップの神崎さんでは釣り合うわけがない...


「え?...それは...
やっぱり...神崎さんと私とでは
釣り合いがとれませんし...」


「釣り合いが取れてないって誰が決めたの?」

誰がって言われても、、誰もが見てもそう思うに違いない...

「だ、誰って...み、みんなです」


「じゃあそのみんなとやらを連れてきてよ」

連れてくるって...

「そ、そんなの...できるわけ...
神崎さん...意地悪しないでください...」


これ以上言い返すことができなくなり
私はシュンとなって俯いた。


「ハハッ。そんなんじゃ俺は納得できないな。」

やはりまともに話すことすらできない私が神崎さんを言い負かすことなんて無理だ...
ならどうすれば分かってもらえるというの...?

「じゃあ一体どうすれば...」


「う~ん...そうだな...」


神崎さんは顎に手を当てて
何やら考え込んでいる。

そしてチラッとこちらを見ると
「諦めて俺のものになるしかないかな...」
そう言って運転席から身を乗り出した。

そして私の後頭部に手を回すと
グイッと引き寄せ
唇にチュッと軽くキスをした。


神崎さんは唇をそっと離すと
放心状態の私を見てフッと笑みをこぼした。

そしてそのまま私をギュッと抱きしめた。

「ごめん。いきなりキスしてしまって。
嫌だったかな?」

びっくりしたけど、嫌ではなかった..

私は抱きしめられたまま、フルフルと顔を横に振った。

「でも、いい加減な気持ちでキスしたわけではないから。」

私は思わずコクリと頷いた。
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